残

*文書いちゃいました。

*同人じゃないです。創作です。
*ドリームじゃないです。果てしなくドリームっぽい(相手が関西弁)ですが違いますよ。
*ちゃんとした男女の話(恋)。
*死ネタ注意。苦手な方はこのページでお帰り下さい。
*だぶーん････(沈

夏が来るから、



また、思い出す。



何年か前の今日、



(もう日数なんて考えたくもない)



貴方は




｢残｣



丁度1年前の今日も此処に来た。


貴方が住んでいた部屋。

毎年、今日になったら此処に来て、掃除をして。


銀のフレームの中の貴方に喋りかける。

今日も。


2本ある歯ブラシとか。
2つあるコップとか。
2組ある色違いの箸とか。

ちゃんと、まだ置いてある。


貴方の寝室に入ったら、もう何年も経った筈なのに貴方の香りが鼻を掠めた。



貴方に抱き?%E:606%#ﾟられた様な気が　した。



そんな自分が馬鹿みたいに思えて、自嘲気味に笑ってから部屋の掃除を始める。

と言っても誰も住んでいないので、軽く掃除機をかけて終わり。


常に電気も水道も使える様にしてある。



一通り掃除が終わってから、ダイニングテーブルの上でずっと伏せていた銀のフレームを起こす。



『来たんか。久しぶりやな。』


フレームの中の貴方は、私に向かって笑ってた。


私が一番好きな笑顔。



毎年此処に来る私を、友達や家族は必死に引き留めてた。



｢忘れなさい。｣

｢早く忘れて、また幸せになりなよ？｣


周りは皆、馬鹿の一つ覚えみたいに忘れろって言っていた。


どうして、

あの人を忘れなければならないの？


私はもう


無理だから。



何故なら、
私はあの人が


ただ好きで。


狂おしい程、愛しくて。


｢好き｣なんかじゃ足りない。
｢愛してる｣でも足りない。

私は此れ程までに。

貴方が愛しい。


そんな人を忘れろなんて、酷な事を平気で周りは言う。



あの人との記憶が。
あの人の笑顔が。
あの人の声が。


私の脳内から消えていくなんて、

嫌。


｢今日もちゃんと掃除、したわよ。｣


貴方は笑ったまま。


『おおきに。俺、綺麗好きやからな。』


｢何時帰って来ても平気だから。｣


頭の中では分かっている。

『ただいま。』という言葉は聞こえない。

聞けない。


フレームを撫でてから、軽くキスをした。


これも、いつもの事。

まるで儀式の様に毎回。


ふと、
思い出す。



夕暮れと。


重い、車輪の付いた灰色の塊。


鈍い音がして、弧を描く様に跳ねた一つの躰。


私が駆け寄ると、貴方は紅く染まった手で私の顔を引き寄せて耳元で囁いた。



『ずっと待っとるから、悲しまんといて。』


途切れ途切れに紡がれた、短い貴方の頼み。


それを言い終わらない内に、貴方は目蓋をゆっくりと閉じた。


貴方の名前を、


叫ぶ事すら出来なかった。

涙さえ流れなかった。


私は、ただ、

もう人間とは思えない程に紅く染まり、歪んだ貴方の躰を抱き?%E:606%#ﾟて



『すぐ行くから。待ってて。』


と囁いて。
貴方の名前を囁いて。


貴方の漆黒の髪を撫でてから、額に軽くキスをした。


西日が貴方の頬を橙に照らし。


遠くで、サイレンの音が響いていた。



ｰｰｰｰｰｰｰｰかたん



寝てたの？


倒れた銀のフレーム。


その中に何も無かったかの様に写っている貴方の笑顔が無性に悲しくて


涙が
出た。



貴方を奪ったのは
下らない、
飲酒運転だった。


何故、
貴方なのか分からない。


ただ、拭えど涙は止まらず、フレームのガラスに小さな水溜まりを作った。


哀しい、淋しい、なんていう安い単語では表せない


(どうして？)



たとえ私がどれだけ貴方が好きでも。


どれだけ貴方に愛の言葉を伝えたくても。


それは不可能で。


貴方はもう

居ない。



fin.

Written by Minami Kuki
2006 06 24